「きっと未来は明るい」―『マイ・リトル・クイーンズ』に残った、父と娘のやさしい余韻
十三の第七藝術劇場で、映画『マイ・リトル・クイーンズ』が上映されています。
舞台は1990年代初頭のペルー・リマ。これから母国を離れようとしている二人の姉妹と、長く疎遠だった父親が過ごす短い夏を描いた作品です。
地域情報メディア『ヨドガワウォッチ』で淀川区の情報をお伝えしている浜崎洋です。
今回は作品の関西宣伝担当の方からご案内をいただき、オンライン試写を拝見しました。
派手な展開で感情を揺さぶる映画ではありません。それでも見終わったあと、不思議と登場人物たちのその後を考えてしまう。わたしにとっては、そんな映画でした。

© 2024 ALVA FILM – INICIA FILMS – MARETAZO CINE – RTS
『マイ・リトル・クイーンズ』はどんな映画?
物語の舞台は、1990年代初頭のペルーの首都リマです。
国内情勢が不安定ななか、母エレナは娘のアウロラとルシアを連れ、安定した仕事のあるアメリカ・ミネソタへ移住することを決めます。
ところが、娘たちが国外へ出るためには、別れた父カルロスの渡航同意書へのサインが必要でした。
こうして、長く離れて暮らしていた父と娘たちは再会します。
カルロスはタクシー運転手をしながら、ある時は自分は役者だと言い、またある時は別の仕事をしていると言う。娘たちにも次々と大げさな話を聞かせます。
少し頼りなく、格好をつけたがる父親です。
それでも、娘たちへの愛情だけは確かに感じられます。

© 2024 ALVA FILM – INICIA FILMS – MARETAZO CINE – RTS
頼りない。でも、嫌いになれない父カルロス
わたしがカルロスを見ていて感じたのは、「愛すべきええ格好しい」ということでした。
家族も娘たちも愛している。
ただ、人生で困難なことにぶつかると、どこかから逃げてしまう。自分を少し大きく見せようとするところもあります。
決して理想的な父親ではありません。
それでも映画の最後に近づくにつれ、カルロスが少しずつ「自分の足で立とう」とし始めているように見えました。
最後に娘たちへ語りかける言葉も、わたしには娘たちだけに向けた言葉ではなく、カルロス自身に言い聞かせている言葉のように聞こえました。
本当にこの先、彼が変われるかどうかは分かりません。
でも、「これからはちゃんと生きていこう」と思い始めたその瞬間に、わたしは不思議と好感を持ちました。

© 2024 ALVA FILM – INICIA FILMS – MARETAZO CINE – RTS
知らないうちに、子どもは成長している
姉アウロラと妹ルシア。
どちらか一人というより、わたしは二人それぞれの気持ちに共感しました。
映画の中では、姉妹が言葉を交わさず、視線だけを合わせる場面が何度も出てきます。
そのアイコンタクトがとても印象的でした。
説明しなくても、お互いが何を考えているのか分かっている。二人の間に積み重なった時間や、親には見えていない感情まで、その視線の中にあるように感じます。
わたし自身、子どもを育ててきて思うことがあります。
親が気付かないうちに、子どもは成長しています。
まだ子どもだと思っていたのに、実はこちらが思っている以上に物事を見ていて、自分なりに考えている。
アウロラとルシアのやり取りを見ていると、そんなことを改めて感じました。

© 2024 ALVA FILM – INICIA FILMS – MARETAZO CINE – RTS
「未来はきっと明るい」と思える瞬間
わたしがこの映画で特に印象に残った場面が二つあります。
一つは、物語の中でもかなりつらい状況のなかで、それでも未来には希望があるという思いを語る場面です。
もう一つは、最後に父カルロスが娘たちへ語りかける場面でした。
どちらにも共通しているのは、現実を無理に美しく見せていないことです。
人生は簡単ではない。
人もすぐには変われない。
それでも、少し先には明るいものがあるかもしれない。
この映画は、そのくらいの距離感で希望を描いています。
実は、家族の物語だけではありません
『マイ・リトル・クイーンズ』の背景には、1990年代初頭のペルー社会があります。
当時のペルーは深刻な経済危機にあり、過激派によるテロや停電、夜間外出禁止令なども人々の日常に影響を与えていました。
一家がアメリカ移住を考える背景にも、こうした社会状況があります。
監督のクラウディア・レイニケ自身も、10歳のころにペルーを離れて暮らした経験を持っています。
この作品は、監督自身が故郷や家族、自分のルーツと向き合う中から生まれた映画でもあります。

© 2024 ALVA FILM – INICIA FILMS – MARETAZO CINE – RTS
わたしがこの映画を好きになった理由
わたしには、好きな映画に共通する三つの要素があります。
- やり過ぎないこと
- 弱い立場の人にやさしい目線があること
- 映画が終わったあと、その人たちの続きを優しく想像できること
『マイ・リトル・クイーンズ』は、わたしにとってこの三つがそろった映画でした。
登場人物の誰かを完全な善人にも悪人にもしていません。
ダメなところもあるし、逃げることもある。
それでも、人を愛する気持ちはある。
そんな人間の不完全さを、責め過ぎず、かといって美化もしない。その描き方がとても好きでした。
こんな人に観てほしい映画です
特におすすめしたいのは、感情を強く説明する映画や、分かりやすく泣かせるドラマが少し苦手という方です。
大きな事件が次々と起こるわけではありません。
人の表情や視線、会話の間、言葉にならない感情を見ながら、その人の気持ちを想像する。
そんな映画をじっくり観たい方には、よく合う作品だと思います。
十三・第七藝術劇場で上映中
『マイ・リトル・クイーンズ』は、2026年9月5日(土)から十三の第七藝術劇場で上映されています。
第七藝術劇場の公式サイトでも、現在「上映中」の作品として案内されています。上映時間は変更される場合がありますので、来館前に最新の上映スケジュールをご確認ください。
| 作品名 | マイ・リトル・クイーンズ |
|---|---|
| 原題 | REINAS |
| 監督 | クラウディア・レイニケ |
| 製作国 | スイス・スペイン・ペルー |
| 製作年 | 2024年 |
| 上映時間 | 104分 |
| 大阪上映 | 第七藝術劇場 |
| 大阪公開 | 2026年9月5日(土)~ |
第七藝術劇場
大阪市淀川区十三本町1丁目7-27 サンポードシティ6階
十三にこうした映画を観られる場所があることも、地域の魅力の一つだと思います。少し足を延ばせば、宝湯の壁に残る昭和レトロな銭湯絵のように、ふらっと立ち寄りたくなる文化的なスポットも点在しています。
こうして映画館や街のことをあれこれ書いていますが、淀川区の暮らしにまつわる話はヨドガワウォッチのトップページにもいろいろまとめていますので、時間のあるときにのぞいてみてもらえたらうれしいです。
映画を観終わったあと、父カルロスやアウロラ、ルシアが、その後どんな人生を歩んでいるだろう。
そんなことを少し想像しながら、十三の街を歩いて帰りたくなる作品でした。
※本記事は映画『マイ・リトル・クイーンズ』関西宣伝担当者から作品情報、画像素材およびオンラインスクリーニングの提供を受け、ヨドガワウォッチ編集部が実際に作品を鑑賞したうえで作成しています。記事内容・感想は編集部独自のものです。
© 2024 ALVA FILM – INICIA FILMS – MARETAZO CINE – RTS












